清掃業界に長く勤めた経験から見た現実
求められているのは、現場の作業員
清掃業の求人、多いですよね。私たち40代でも応募できる数少ない求人のひとつです。でも、清掃業はブラックな職とも言われていいますし、転職先として不安な方も多いと思います。
私は20数年、清掃業界で働いていました。その経験から、結論を言うと、やはり底辺の仕事と言われてしまうのはしょうがないと感じます。
清掃業は、大量の現場作業員が必要です。そして、それを管理する、ごく少数の昔ちょっとだけ清掃作業をかじっただけの無能な管理職と、最低賃金で働かされる女性事務員、現場も知らないくせに、アホみたいな低価格で受注をしてくる営業。だいたいこんな構造になっています。
そして、常に人が足りずに、求人が出続けているのは、現場の作業をしてくれる人なわけです。
現場作業員の現実
「掃除」をするわけですから、当然オフィスやお店が開店しているときにはできません。圧倒的に土日や祝日、夜から深夜、あるいは早朝の作業が中心になります。
誰も見ていない深夜の作業、やりがいなんて感じられません。慣れてしまえば単純作業ですし、ただただ、つまらない作業の繰り返しです。
「若いころはよかったけど、40過ぎて急にきつくなったよ」、 朝9時に会った10歳上の先輩は、夜勤明けだったそうで、いまから帰るとのことでした。時間が不規則で体を壊した、なんて話もよく聞きました。
汚いのは当然ですし、肉体労働です。ポリッシャーや洗剤などの道具はかなり重いです。ある程度体力に自信がある方でないと厳しいでしょう。
なので、若い人がほしいのですが、いくら募集してもほとんど来てくれませんし、入ってもすぐ辞めていきます。当然、作業員の年齢は、上がり続けています。
売上を上げるため、無茶な契約
清掃業界は、クレーム率がすごく高いです。キレイになったかどうかなんて、人の主観ですからね。
さらに、売上をあげることばかり考えている会社では、無茶な作業を受注することが、クレーム率をさらに上げることになってしまっています。
営業マンはキレイな格好で、調子のいいことを言い、低価格で契約してきます。遠かろうが、人の手配が難しかろうが、難しい作業だろうが、お構いなしです。
それをこなすのは、現場の作業員です。エライ人からは、「人を工面して、なんとかこなせ」。具体性は何もない、指示とはいえない、ただの「命令」が出るだけです。
結果、少ない人員で、1日に何件も数をこなさなくていけない状態になるわけです。移動だけで数時間掛かったり、人がいないので、ひとつの現場で、朝9時から早朝4時まで掛かることもあります。
こんな状態で、「いい仕事」なんてできるはずがありません。クレーム率は上がるばかりです。
現場の人間ばかりにしわ寄せ
当然パートやバイトも雇っていますが、定着率は低く、すぐに辞めていきます。シフトに入っているのにドタキャンもあります。それを埋めるのは社員です。
バイト君の掃除では、作業が適当だったり、やり残しがあったりと、クレームも多いです。そして、その手直しは社員です。
協力店と称して、地場の小さな会社や、個人事業主とも提携していますが、こちらも作業レベル、技術、スキルはまちまちです。技術のない人に頼めば、クレームとなり、社員が対応することになります。
顧客からの値下げの要求は、この下請けが直撃です。断れば、この先仕事がもらえませんから、のまざるを得ません。当然モチベーションは下がります。作業レベル、品質は下がっていくわけです。そして、当然クレームに。このフォローも社員の負担となります。
悪い表現ではありますが、清掃業界は、コミュニケーション能力がなく、会社勤めができなくて、しょうがなく個人事業主で清掃業をしている、汚らしいオッサンに頼っている業界。とも言えます。(言い方が悪くてゴメンなさい。高い技術を持つすばらしい職人さんもいっぱいいます。)
清掃業は規模の大小があっても根本は同じ
考えてみてください。清掃業を全国規模で直営でやっている会社は皆無です。数千人規模の管理をしてまでやる旨味がない業界なんです。
全国展開しているのは、
ダスキン : 代理店システム
おそうじ本舗 : フランチャイズシステム
だけです。
代理店システム、フランチャイズシステム、言い換えれば、他の会社や個人事業主に丸投げということです。いくら本部が管理といっても、別会社ですよ。本当にサービスレベルが保たれると思いますか?
さらに言えば、大手がネームバリューだけで売っている清掃作業なんて、絶対買っちゃダメですよ。カジタクとか、「イオンのお掃除」なんて言っても、実際に作業をおこなうのは、割の悪い契約を結ばされている、地場の個人事業主、100%下請けに流してるだけですから、当然、作業レベルなんて玉石混交です。
「軽作業」は決して「楽で簡単な作業」ではない
40代50代でもできる軽作業!清掃業の求人を見て、これならできると思ったあなた。確かに人間関係は楽でしょう。特に、賃貸物件の退去後の空室清掃などは、朝から夜までたったひとりで作業ができます。
本当にその作業に見合った報酬なのか、よく確かめるようにしてください。楽そうだからと、安易に飛びついてはいけませんよ。
そして、その会社の将来性もよく見てください。現場の作業は、実際にキャッシュを生み出している大事な部署です。
それが、エラい人や営業部からは下に見られているような会社では、これから先は厳しいでしょう。
現場と管理部や営業部が、対等な関係を保てているかどうか、が見るべきポイントですよ。
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