新卒で入社した会社が、ブラック企業になっていった
不況に強い業界の会社に新卒で入社
私が新卒で就職活動をしたのは、就職氷河期と言われはじめた翌年、就職「超」氷河期なんて言われたときでした。
50社以上は応募したでしょうか、本当に苦しい1年でした。「現実」を突きつけられ、本当の挫折なんて、これっぽっちも経験していなかったんだと知りました。自分の能力のなさを嫌というほど思い知らされました。
それでも希望に満ち、やりたいこと、入りたい会社を夢見ていました。もう少し現実的な選択をしていれば、と後悔するのは先のことです。
結局夢はかなわず、1社だけ採用となった企業は、清掃業の会社でした。
不況に強いと言われる業界で、まだバブルの残り香が感じられる雰囲気でした。大卒がわんさか応募してきたことに浮かれているくらいでしたから。
遅れてきた「バブル崩壊」
この清掃業の会社、バブル崩壊の波は遅れてやってきました。不景気が続き、いくら不況に強い業界といえども、経費削減の波は、この業界にもやってきました。
それに追い打ちをかけるように、創業社長から2代目への社長交代です。典型的ダメな2代目。遊ぶことしか考えていない、無能の極みのような人物です。
最後にあったときは、あまりに太っていて、別人のようでした。食べることしか楽しみがないこの人。長くはないだろうと本気で思いました。余談です。
同業社の多くが、多角経営、他の柱を模索していく中、無策なこの会社は、安売りで顧客を増やすことだけを続けました。
安いわけですから、それなりに顧客は獲得できます。仕事量は増えていきます。ですが、利益は増えません。当然です。
まあ、どの業界もそうだとは思いますが、しわ寄せはすべて現場の社員です。能無しのエラい人たちは、具体策を示すことなんかできず、ただ「やれ」だけの指示。
結果、末端の社員の離職率は、どんどん上がっていきます。常に人を募集し続けるブラック企業のできあがりです。
さらに決定的なことが起こりました。さらに社長が交代したんです。そして、この社長が、この会社にとどめを刺すことになりました。
会社がブラック企業へ落ちていくサイン
経営者がこれをやりはじめたら要注意
前置きが長くなりすいません。本題です。
業績が加速度的に悪くなっていく中、その新しい経営者がおこなっていったことを、ここでお話していきます。
時系列で並べています。あなたの会社がどの段階か、目安としてください。
ブラック度:60% 商品の品質を下げる
まずおこなったのが、「商品の品質を下げる」ことです。
目線の利益を優先するようになっていきました。とにかく削減です。お客様の満足度を下げることになることでも、です。その場しのぎの短絡的な考えです。
質が悪いとわかっていながら、安い原料や商材を使うようにしていきました。以前なら、廃棄していたものまで、製品として使いはじめました。結果、品質を求める一部の顧客は離れていき、クレームも増えました。
納品した後、逃げるようにその場を離れる納品担当者。配送社員のモチベーションも大きく下がっていきました。
仕入れ業者も叩きまくりました。つきあいで自社の商品を購入させるなんてことも当然のようにおこなわれました。何人もの業者さんに泣きつかれました。もうつきあえないと言われ、離れていくメーカーさんも増えていきました。
ですが、これは効果はありました。短期的に見れば、利益はかなりの回復を見せました。長期的にどうか、ということは言うまでもありませんが。
ブラック度:70% サービスの質を下げる
その場しのぎの戦略は続きます。次におこなったのが、「サービスの質を下げる」です。
ひとりあたりの仕事量を、極限まで増やしていきました。営業部は、細かいアフターフォローなんてできるわけがない状況。管理部も、ひとつひとつの仕事が乱暴になり、精度の低い業務が増えていくこととなりました。
ルート配送は、1日50件以上のコースが設定されました。納品5分、次までの移動に5分だとしても、500分です。それだけで8時間以上ですよ。当然、残業代は出ません。みなし残業に含まれています。
社員がおこなっていた業務を、次々とパート社員化していきました。事務、経理、総務なんていう内勤は当然、お客様へ商品を配送する業務まで、です。
配送業務を、パート社員でおこなうノウハウもなんて、持っていませんでしたので、管理体制もいいかげんです。
そんな状態で、パートさんたちが定着してくれるわけもなく、配送担当者の在籍期間の平均は、半年という、 異常に高い離職率となりました。
会社の顔と言える、お客様担当が、半年ごとにころころ変わるような状況になったわけです。
さらに、信じられない指示が出ました。仕入れの予算を決め、それをオーバーする場合は、仕入れが禁止となりました。営業部が、受注をしたとしても、です。
納品先に優劣をつけ、商品をやりくりしていくしかありません。当然、納期の遅れやクレームは多々発生します。ですが、仕入れ予算厳守のほうが優先です。
社長の手元に届く、数字上で、利益が出ていることのほうが大事なんです。
ブラック度:80% 社内、社員が使うお金を絞る
一通り、商品とサービスの質を落とし、ある程度利益を確保しましたが、そんな短期的な視野での経営で、業績が良くなっていくことなんて、あるわけがありません。
さらに業績が悪化していくなか、次にこの経営者が考えたのが、社内を徹底的に絞ることです。元々かなり渋い会社でしたが、それを極限まで突き詰めていきました。
何かを購入する稟議は、ほとんど却下。お中元やお歳暮もほぼ廃止です。業務に必須なボールペンなどの文具ですら自己負担です。
個人で電気ストーブを使うこともダメ。下が倉庫で打ちっぱなしにタイルカーペットを引いただけの、底冷えのするオフィスで、真冬に寒さに震えながらの業務です。
人員の補充なんて、もってのほかです。何度も何度も、稟議を書き続け、窮状を訴え続けた所長がいましたが、それが叶うことはありませんでした。ほぼすべての部署が、人員不足で窮する状況となりました。
当然、残業は増え続けていきます。ですが、退職した元社員が、残業代未払いで訴訟を起こしたため、部下には残業はさせるな、との指示がでました。(訴訟の話は、社員には隠されていたのは言うまでもありません。)
仕事量は増え続ける、だが部下に残業はさせるな。
どうすればいいというんでしょうか。結果、タイムカードの操作が日常的におこなわれるようになったわけです。
ブラック度:90% 社員を徹底的に監視する
次に、訴訟を起こすような社員が現れないように、社員を徹底的に監視するようになっていきました。
営業部の社用車を複数人でシェアする、これは理解できます。ですが、それにGPSをつけ、どれだけ無駄なく移動したか、チェックをはじめました。訪問する順番まで、社長にべったりのイエスマン部長が決めるようになりました。
管理部門も同様です。社内の配置は、学校の教室のように改められました。先生=社長は、いちばん後ろです。皆がなにをやっているか、パソコンの画面をすべて自分で見れるようにしたわけです。
ネットの閲覧もすべて監視対象です。メールの内容まで見ていたのでは、と今では疑っています。盗聴くらいはやっていたかもしれませんね。本当にそれくらいやっていたとしても、驚かない状況でした。
残業代の訴訟があったため、法律的な防御策には、万全な体制を整えていきました。
働き方や待遇を改善するといった、根本的な解決ではなく、「訴訟」への対症療法として、法的に理論武装をして、社員に立ち向かうことを、この経営者は選択したわけです。
社内規定の改正について、総務部長が全拠点をまわって説明をすることまでしていました。表向きには、みなさんの待遇を改善するためだなんだとか、いいようなことを言っていましたが、全社員がそうではないことはわかっていました。
ブラック度:100% 言うことを聞かない社員から辞めるように仕向ける
仕事は増え続ける、でも人は入れてくれない。なのに、会議や報告書など、上への報告の回数はどんどん増えていきました。
そして、その内容が気にくわないと、ダメ出しです。いい報告しか、してはいけないわけです。
不安で不安で仕方がなかったんでしょう。下から、「問題ありません」という言葉が聞きたいわけです。
自分が安心をしたいため、「報告」という仕事を、どんどん増やしていったんです。言うまでもなく、社の生産性にまったく貢献しない仕事です。
最後には、本当のことを言う社員を、排除するようになっていきました。もう完全に末期です。
自身の能力のなさもわかっているんでしょうね。だからこそ、自分に意見をしてくる、できる人間が怖いわけです。
社内を、自分の言うことを聞く人間だけにする。これを本気でおこなっていきました。
関東から、東北や関西への異動命令、しかも来週から。部長から一気に平社員へ降格。来月から減給30万。部長にルート配送への配属転換指示。時間が経つにつれ、指示はどんどん酷くなっていきました。カネカさんなんて、可愛いもんです。
最初はちょっとの指示だったのが、少しずつ酷くなっていきました。それを続けていった結果、信じられない非道な行いに、変わっていったんです。
完全に麻痺してしまっています。 この経営者は、人としての感情をなくしてしまいました。
人間は、慣れてしまうと、どんなに酷いおこないをしようが、なにも感じなくなっていくんですね。クメールルージュは言い過ぎだとはわかっていますが、同じような思考だったんだろうと思わざるを得ません。
これ以上、煮詰めることができないくらい真っ黒に
会社全体が疑心暗鬼な状態に
少しでも気にくわないことがあれば、社長自らが徹底的に糾弾する状態です。結果、自分や、自部署に火の粉が掛からないように、他の部署を密告するような状況になっていきました。
社長自らが、それを奨励し、密告を促すように仕向けているくらいでしたから。密告して、褒められていた人間が、その数か月後には標的に変わったことも何度もあります。
標的となった人は、辞めるように仕向けられ、問題と思われてしまった部署は、解散や、部署ごと地方へ移動といった措置が取られました。
社員皆が疑心暗鬼な状況です。誰も何も言わない、いや、言えない状態となっていきました。
一度落ちていくと、もう戻れない
50年の歴史があり、地元に根差し、ここまで堅調に成長していた会社でしたが、落ちていくのは本当に簡単なんだなと、実感しました。
一度落ち始めると、もう止められません。悪いスパイラルが、しっかりとかみ合ってしまい、もがけばもがくほど、さらに悪くなっていく、さらに加速度を上げて。そんな状況でした。
私は辞めることを選択しました。どうしても、この経営者の元で働くことに我慢ができませんでした。
私が辞めた頃、それでもしがみつく人もたくさんいました。ですが、その後、たったの2年で、十数名の役職者が、辞めることを選択しています。3名の役員まで、です。
その数は、全役職者の50%にも上ります。つい数か月前までは、社長にべったりの犬のような人間まで含まれています。
それでも残っている人間もいます。まだ若い世代で、上がいなくなったことで、自分に役職がついて浮かれている人間もいました。そう思ってしまうのはしょうがないことでしょう。
ですが、上にすべてイエスと言い、どんなに虐げられても、しがみつくことだけを考えている人間の集まりが、成長していく組織にはなり得ません。後悔は未来にやってきます。
みなさんの会社はどうですか?普通の会社だったのが、悪いスパイラルに一度はまってしまうと、まさしく坂道を転げ落ちていくように悪化していくものですよ。
私は、何回かの転職を重ね、こんなブラック企業にしがみつくことが、どれだけ無駄だったかを実感しました。
今の会社は、まだ大丈夫だなんて、都合のいいように考えたいのは、人間の正直なところです。ですが、どうやったって上がり目のない、本当にダメな会社もありますよ。
そんな会社に縛られていませんか?まずご自分の健康と、ご家族の幸せを考えていただければと思います。
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